
手足は痩せているのに顔と体は太る「クッシング症候群」の原因と治し方
「この頃、顔がまるくなってきたし、おなかまわりも出てきた・・・」、ついにダイエットを決意!?いえ、ちょっと待ってください、その必要はないかも。
だって、手足は普通にやせていますよ。その体系って・・・、もしかしたら『クッシング症候群』ではないですか。
どんな症状?
特徴的なのがその容姿です。顔は満月のように丸くふくらみ、肩や胴まわりには脂肪がついていますが、手や足はひょろ長いままです。
ふくらんで赤らんだ顔には、にきびが目立ちます。皮膚はやわらかく、あざができやすくなり、おなかやふとももには赤紫色の「肉割れ」がはいります。
ほかには、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、感染症などをおこします。また、患者の過半数以上に、不安障害、人格障害、気分障害、統合失調症様障害、薬物依存、摂食障害といった精神障害が出現します。
気分障害を併発した場合は、しばしば幻覚や妄想をともなうこともあります。
いったい何が原因?
脳の下(目の奥の方)にある豆粒大の「下垂体」と呼ばれる部分に腫瘍ができて、「コルチゾール」(別名「ストレスホルモン」)が過剰に分泌されることが原因です。
コルチゾールは、血圧上昇、血糖上昇、心収縮力の上昇、心拍出量の上昇などの機能を担う、人間にとって不可欠なホルモンです。
しかし同時に、筋肉組織をこわしてみたり、筋肉をつくるのをじゃましてみたり、脂肪をためこんでみたり・・・、何とも厄介な性質も持っているのです。
つまり、コルチゾールがおおいと、循環器系への負荷がたかまり、筋肉が減るということです。クッシング病の症状で、様々な病気を併発したり、腕や足など筋肉の多い部分はやせて、お腹や顔が太るというのはこのためです。
また、コルチゾールの増加は免疫を低下させるともいわれます。そのため、精神的にも「やる気がでない」などうつ傾向になりがちです。
治し方
症状を緩和させる薬はいくつかありますが、残念ながら決定的なものはなく、腫瘍を手術で摘出してしまうのがもっとも効果的といえます。
必要であれば「ガンマナイフ」などの放射線療法をおこない、腫瘍を完全に除去します。
摘出で腫瘍がなくなったあとでも、下垂体からの分泌が正常化するまでには1年ほどかかります。定期的に病院を受診し、ホルモン剤の調整をおこなう必要があります。
また、合併症の治療もありますので、治療が複雑化/長期化する場合もありますが、適切な治療をほどこせば、ほとんど全ての方が健康な社会生活や家庭生活をおくることができるようになります。
予防するには
クッシング病そのものに対する予防は特にありません。しかし、発病した場合、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などを合併することが多いので、それらの予防が必要です。
また筋力がおちますので、転倒などで骨折しないように体をきたえておくとか、うつ傾向にならないようにご自分なりのストレス予防/発散法を身につけておく必要があります。
さらには、感染に弱くなりますので、人ごみをさけたり、衛生に気をくばったり、免疫力をあげるなどして、感染予防につとめてください。
最後に
身体の中のほんの小さな臓器に腫瘍ができる病気なので、そこまで頻度の高い病気ではありません。
しかし、コルチゾールがわたしたちの生命活動にとっていかに重要かをかんがえれば、分泌異常が重篤な症状がひきおこすのも納得ですね。